SHARPの情報システム事業部から発売されていたMZシリーズの人気機種「MZ-1500」は、MZ-700の後継機として1984年6月に登場しました。
※SHARPのカタログ
イメージキャラクタはアイドルユニットわらべの倉沢淳美さん。
軽々と持っているように見えるMZ-1500ですが、実は5kgあります。
SHARP MZシリーズ
X1シリーズで人気を博したシャープですが、もうひとつのMZシリーズも忘れてはいけません。
MZシリーズの特徴といえば、プログラムをROMに持たずにRAM領域に読み込んで実行する「クリーンコンピュータ設計」。
本体にキーボード・モニター・データレコーダなどを一体化してオプション品なしですぐに使える「オールインワン設計」。
MZシリーズの始まりは4ビットマイコンのキットということもあり、初代機のMZ-80Kはキーボードが未組立状態のセミキットとして販売されています。
MZ-80Kシリーズ年表
機種名 | 型番 | 発売年月 | 価格 | 主な仕様 |
MZ-80K | 1978年 | 198,000 | オールインワン・キーボード未組立のセミキット | |
MZ-80C | 1979年 | 268,000 | オールインワン・グリーンディスプレイ | |
MZ-80K2 | 1980年 | 198,000 | MZ-80Kの完成品 | |
MZ-80K2E | 1981年 | 148,000 | MZ-80K2の廉価版 |
MZシリーズの歴史はマイコンキットだったMZ-80Kからはじまります。
マイコンキットだったMZ-80KをベースにC、K2へと進化。
MZ-80Bシリーズ年表
機種名 | 型番 | 発売年月 | 価格 | 主な仕様 |
MZ-80B | 1981年 | 278,000 | MZ-80シリーズハイエンド、320×200ピクセルのグラフィックス画面 |
MZ-80シリーズのハイエンドはMZ-80B。
MZ-80Bでは320×200ピクセルのグラフィックス表示ができるようになります。
MZ-80Bはその後MZ-2000シリーズへと進化していく。
MZ-1200シリーズ年表
機種名 | 型番 | 発売年月 | 価格 | 主な仕様 |
MZ-1200 | 1982年7月 | 148,000 | 海外向けMZ-80Aの国内向けモデル・グリーンディスプレイ | |
MZ-700 | MZ-711 | 1982年11月 | 79,800 | モニターを分離し家庭用テレビ出力対応、レコーダなしの基本モデル |
MZ-700 | MZ-721 | 1982年11月 | 89,800 | データレコーダ内蔵 |
MZ-700 | MZ-731 | 1982年11月 | 128,000 | データレコーダ・プロッタプリンタ内蔵 |
MZ-1500 | 1984年5月 | 89,800 | PCG及びPSG搭載、QDドライブ搭載 |
海外向けモデルであるMZ-80Aを国内向けにアレンジしたのがMZ-1200系。
一体型だったモニターを分離して家庭用テレビ出力に対応した低価格路線のMZ-700。
MZ-700にPCGとPSGを搭載、さらに外部記憶デバイスをクイックディスクにし、低価格路線で一般家庭への普及を目指したMZ-1500。
このラインには日本では未発売の海外モデルMZ-800も存在する。
MZ-800にはなんとハードウェアスクロール機能が搭載されておりグラフィック画面をスムーズにスクロールすることができる。
欧州ではビジネスにも使えるパーソナルコンピュータとして人気があったようだが(CP/Mが動いた)ホビーユースの国内向けモデルにもハードウェアスクロール機能を実装してほしかった。
MZ-2000シリーズ年表
機種名 | 型番 | 発売年月 | 価格 | 主な仕様 |
MZ-80B2 | 1982年 | 278,000 | MZ-80BにグラフィックRAMを追加したバージョン | |
MZ-2000 | 1982年 | 218,000 | オールインワン設計・カセットデッキ内蔵・グリーンディスプレイ | |
MZ-2200 | 1983年 | 128,000 | ディスプレイ分離・グラフィックメモリ標準装備 |
MZ-80シリーズ最高峰のMZ-80BにグラフィックRAMを追加したMZ-80B2。
MZ-80Bの基本設計を踏襲した上位互換機がMZ-2000になる。
シャープの事業部統合により新たな事業部でMZシリーズを受け継いだ。
MZ-2000シリーズは新たな事業部で開発されたため数字に00が追加されている。
MZ-2500シリーズ年表
機種名 | 型番 | 発売年月 | 価格 | 主な仕様 |
SuperMZ | MZ-2511 | 1985年10月 | 168,000 | 初期モデル、FDD1基搭載 |
SuperMZ | MZ-2521 | 1985年10月 | 198,000 | 初期モデル、FDD2基搭載 |
SuperMZ V2 | MZ-2531 | 1986年10月 | 199,800 | 辞書ROM,増設メインメモリ、TVコントロール、FDD2基搭載 |
SuperMZ V2 | MZ-2520 | 1986年10月 | 159,800 | データレコーダなし、旧機種互換モードなし、FDD2基搭載 |
そしてシリーズ最高峰もスーパーMZことMZ-2500。
8ビットパソコンが成熟期を迎えた1985年に遅ればせながら登場する。
他機種にはないハードウェアスクロール機能を持ちシューティングゲームやアクションゲームに強かった。
過去のソフトウェア資産を受け継ぐため、MZ-80BモードとMZ-2000/2200モードを持っていた。
MZ-1500仕様
■MZ-1500仕様 | |
CPU | Z80A(3.58MHz) |
ROM | モニタ 12KB キャラクタジェネレータ 4KB |
RAM | メインメモリ 64KB、ビデオRAM 4KB PCG(プログラマブルキャラクタジェネレータ)24KB |
表示能力 | テキスト 40字×25行 グラフィック 320×200ドット+24文字のPCG(8色) または1000文字のPCG(8色) パレット機能(瞬時色変換機能) ビデオ出力 RGB端子、コンポジット端子、RF端子 |
サウンド | 6オクターブ3重和音のPSG2チャンネル スピーカー1個内蔵 外部オーディオ端子2チャンネル |
QD(クイックディスク) | 片面64KB、両面128KB 片面64KBのロード時間約8秒 |
外形寸法 | 幅440×奥行き305×高さ109mm |
重量 | 5kg |
きわだつグラフィック能力
320×200ドットの8色フルグラフィック+24文字のPCG、または1000文字のPCGが使い分け可能。
目的に合わせてオリジナルグラフィックが駆使できるクリエイティブな設計。
さらにいろいろな字体やキャラクタが簡単に作成できるユーティリティソフト「PCGエディタ」も装備。
ゲームやホビーにフルに活かせます。
またCRT出力は3系統装備、鮮やかなRGBディスプレイはもちろん、家庭用カラーTVやビデオモニタも利用できます。
※カタログより
当時のマシンからすると320ドット×200ラインというのはごく普通のスペックですが、MZ-1500の位置づけは廉価な普及マシンといったところなのでまあそんなもの。
X1シリーズなどでも導入されていた、ユーザーが自由にキャラクタを定義できて文字やグラフィックとして利用できるPCG(プログラマブルキャラクタジェネレータ)機能を搭載しています。
そしてなんといっても専用ディスプレイを用意しなくても家庭用のテレビに画面を出力できるので初期費用が安く抑えることができて入門機として初心者にも好まれました。
サウンド機能もここまで充実
パソコンをよりクリエイティブに活用するためのサウンド機能として6オクターブ3重和音のPSGを2チャンネル内蔵。
音楽演奏もグンと厚みを増してきます。
外部オーディオ端子も2チャンネル装備していますので、お手持ちのオーディオ機器に接続すればより迫力のあるサウンドが楽しめます。
さらにゲームのタイトル音楽やBGMを演奏するためのデータを簡単に作成できるユーティリティソフト「PSGエディタ」も装備しています。
※カタログより
サウンドも普及機としてはなかなかのスペック。
PSG(プログラマブルサウンドジェネレータ)機能を搭載。
BGMを自作可能なユーティリティソフトも標準添付。
外部出力も持っており、アンプをつなげば自作音楽をオーディオ機器から流すこともできたのです。
クイックディスク搭載
MZ-700の後継機として登場したMZ-1500、クイックディスク(QD)ドライブを搭載してプログラムの読み込みがとても速いのが特徴でした。
ただしクイックディスクはフロッピーディスクのように読み書きしたい場所に自由にアクセスすることはできません。
ディスクの片面全体を順に読み出すシーケンシャルアクセスしかできないため、読み書きにはバッファが必要になりました。
しかしクイックディスクはドライブがとてもコンパクト、メディアは両面で128KBの容量があり、片面では64KB、その片面64KBを僅か8秒ほどで読み込むことができます。
読み込みに5分以上かかることもあったカセットテープとは大違いです。
クイックディスクはファミコンのディスクシステムなんかにも採用されていましたね。
ドライブもメディアもとても安く製造できるため、ディスクドライブを標準搭載しながらMZ-1500の定価は89,800円。
高性能化で高価格化が進んでいた当時の8ビットマシンとは違い、入手しやすい価格でした。
ソフトウェアもMZ-700の資産をそのまま引き継げるのはもちろんのこと、電波新聞社から多くの名作が移植され発売されました。
※Oh!MZの広告より
MZ-1500の実機
MZ-1500の本体はキーボード一体式。ベースとなるMZ-700と同じ形状です。
本体の右側上部にはQDドライブがあります。
ドライブ右側にあるイジェクトボタンでカバーがオープンします。
MZ-1500はこのQDがウィークポイントでもあり、古くなってくると壊れている個体が多くなると聞きます。
MZ-1500のキーボードにはテンキーが無いんですよね。
背面のインターフェースはX1シリーズに比べてとてもシンプル。
映像と音声のRCAジャックが標準でありますのでビデオ入力のあるテレビにそのまま繋ぐことができます。
パソコンのために専用ディスプレイを用意する必要が無いですね。
JOYJOYパックがありましたので中身を見てみましょう。
野球狂・ホームダイアリー・簡々漢・エンターテイナー・パーティーメーカー・BASICスタディ
コチラのセットにはゲームの「ばってんタヌキの大冒険」があります。
アクションゲームなんですが穴に落ちるときに吹き出しで「おちる~」とか言うんですよね。
ほのぼのしたゲームです。
ご愛用者カードの登録はがきがありました。
シャープ株式会社産業機器事業本部とあります。
あれ!?MZシリーズは情報システム事業部で開発されていたのでは?
と思いましたが、開発や製造と販売は別事業だったのかも。
クイックディスクのメディアを入れて起動してみようと試みましたが、このMZ-1500は読み込みができませんでした。
クイックディスクは古くなると読み込みができなくなってダメですね。
MZ-1500のクイックディスクドライブは故障が多いことで知られていますが、その分修理方法も確立されていますので助かります。
分解してみないとわかりませんが、このドライブもベルトが伸びてしまっているのかもしれません。
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