1970年代後半あたりから日本市場に登場しはじめた家庭用パーソナルコンピュータ。
1980年代になるとグラフィック機能を備えたものが多くリリースされてきます。
中でも1981年にNECから発売された「PC-8801」の画面表示は高解像度で多くのゲームが発売されます。
そして後に続けとばかり開発意欲旺盛な家電メーカー各社から次々とニューマシンが登場します。
1982年
1970年代後半に「御三家」と呼ばれた日立の「ベーシックマスター」、シャープの「MZ-80K」、NECの「PC-8001」。
1980年代前半になるとその勢力図が変わり始めます。
1981年にNECが「PC-8001」をさらに高機能にした「PC-8801」シリーズを販売開始。
その翌年の1982年にはシャープから既存の「MZ」シリーズとは異なるもうひとつのシリーズ「X1」シリーズを発売。
富士通からも「FM-7」シリーズが発売されます。
そしてこの3機種が新たな「御三家」としてしばらくの間熾烈なライバル争いをすることになりました。
ベーシックマスターレベル3 MarkⅡ
機種名:ベーシックマスターレベル3 MarkⅡ
メーカー:日立製作所
発売日:1982年4月
価格:198,000円
CPU:HD6809(6809互換、動作周波数:1MHz)
※日立「ベーシックマスターレベル3 MarkⅡ」カタログより
日本初の家庭用パーソナルコンピュータとして1978年に発売された日立の「ベーシックマスター」。
その後継機としてソフトウェアの互換性を捨てCPUに6809を採用して1980年に登場した「ベーシックマスターレベル3」。
そして「ベーシックマスターレベル3」の低価格版として1982年に登場したのがこの「ベーシックマスターレベル3 MarkⅡ」。
定価298,000円だったL3から価格を10万円下げて販売価格を198,000円とした。
この頃になると家庭用パソコン市場の勢力図は1970年代とガラッと変わり、新たな御三家と呼ばれる人気機種が登場します。
FM-7
機種名:FM-7
メーカー:富士通
発売日:1982年11月8日
価格:126,000円
CPU:MBL68B09、動作周波数:8MHz
※富士通「FM-7」カタログより
前年の1981年に富士通から新たに発売された「FM-8」の廉価版後継機種として登場した「FM-7」。
廉価版とはいえ性能は「FM-8」よりも向上している。
クラフィックス機能はそのままでCPU速度を高速化。
サウンド機能は8オクターブ三重和音での出力が可能に。
ライバルの「PC-8801」よりも高性能ながら価格は10万円ほど安い。
ゲームをプレイにするのに最適なマシンとして御三家に昇格した。
MZ-80B2
機種名:MZ-80B2
メーカー:シャープ
発売日:1982年11月
価格:278,000円
CPU:Z80A(動作周波数:4MHz)
※シャープ「MZ-80B2」カタログより
前年の1981年に発売された「MZ-80B」のマイナーチェンジ版。
「MZ-80B」からの変更点はグラフィックRAMを標準搭載して外観(エンブレムの文字)が変わった程度。
価格据え置きでオプション装着した程度のマイナーチェンジ版。
MZ-2000
機種名:MZ-2000
メーカー:シャープ
発売日:1982年
価格:218,000円
CPU:LH0080A(Z80Aのセカンドソース)(動作周波数:4MHz)
※シャープ「MZ-2000」カタログより
「MZ-2000」は1981年に発売された「MZ-80B」の後継機種。
この頃のシャープは事業部の再編成が行われており、MZシリーズは元々同シリーズを開発していた部品事業部から情報システム事業部へと引き継がれた。
それまでのMZシリーズ同様に、本体にモニターとキーボード及びカセットデッキが一体型となっている。
カセットデータレコーダーのボーレートは機種名と同じく2000ボーである。
10型グリーンディスプレイモニターと電磁メカカセットデッキを標準搭載し、「MZ-80B」よりも6万円安い価格を設定。
オプションのGRAMを購入すれば、640×200ドットで外付けカラーモニターに8色表示が可能になる。
MZシリーズとして唯一、カセットデッキが縦置きになっている機種だ。
MZ-1200
機種名:MZ-1200
メーカー:シャープ
発売日:1982年5月
価格:148,000円
CPU:Z80A(動作周波数:3.58MHz)
※シャープ「MZ-1200」カタログより
MZ-シリーズの海外向け商品「MZ-80A」のを国内向け仕様にしたのがこの「MZ-1200」。
基本的な仕様は「MZ-80K/C」から引き継いでいる。
筐体をプラスチック成型品にしてオールインワンパソコンとしては低価格な148,000円に抑えている。
MZ-700
機種名:MZ-700
メーカー:シャープ
発売日:1982年11月15日
価格:MZ-711 79,800円(基本モデル)
MZ-721 89,800円(データレコーダ内蔵)
MZ-731 128,000円(データレコーダ内蔵、プロッタプリンター内蔵)
CPU:Z80A(動作周波数:3.58MHz)
※シャープ「MZ-700」カタログより
「MZ-80K」シリーズの後継機「MZ-700」。
CPUの動作クロックを2MHzから3.58MHzに上げて高速化。そして最大の進化はMZシリーズ初の標準でカラー表示になったことだ。
この頃周囲のメーカーが発売する8ビットパソコンは殆どがカラー化されており、MZシリーズのグリーンディスプレイ単色表示は見劣りがした。
そこで「MZ-700」では、MZシリーズの売りであるオールインワンを棄て、ディスプレイを分離することに。
そしてカラー表示に対応し、デジタルRGBディスプレイのほかに家庭用テレビに接続できるようコンポジットビデオやRF出力が用意された。
内蔵機能により3つのモデルがラインナップされ、ユーザーが選べるようになったのも新しかった。
データレコーダ内蔵の「MZ-721」でも10万円を切る価格でライトユーザー中心に人気が出た。
グラフィックスは使えないがPCG(プログラマブルキャラクタジェネレータ)を利用して美しいキャラクタ表示に挑戦するツワモノもいた。
Oh!また、後にMZ、Oh!Xで「タイニーゼビウス」や「スペースハリアー」といったアーケードで人気のゲームの移植版が掲載された。
この反響で「MZ-700に不可能はない」といわれた。
X1
機種名:X1(型名:CZ-800C)
メーカー:シャープ
発売日:1982年11月
価格:155,000円
CPU:Z80A(動作周波数:4MHz)
※シャープ「X1」カタログより
「X1」は1982年11月にシャープから発売された家庭用パーソナルコンピュータ。
8ビットパーソナルコンピュータの御三家と呼ばれ、NECの「PC-8801」や富士通の「FM-7」などと人気を分けたシリーズになります。
シャープからは部品事業部のMZシリーズがすでに発売されてたが、このX1シリーズはテレビ事業部からの発売。
X1シリーズの特徴のひとつに挙げられるのがテレビとの連携機能。
専用ディスプレイテレビとの組み合わせで、テレビ画面とパソコン画面を重ね合わせる「スーパーインポーズ」や、キーボードからチャンネルコントロールができるなど、テレビ事業部の商品らしい個性でMZシリーズと差別化されました。
他社のパソコンにはない個性的な機能を付加したことでX1はホビー用パーソナルコンピュータとして人気シリーズになります。
もうひとつX1シリーズの特徴としてよく語られるのが「クリーン設計」。
これは、シャープの別シリーズである「MZシリーズ」と同様の設計で、電源を投入すると、まず最初にIPL (Initial Program Loader) が起動し、FDDなどの周辺機器よりプログラムを読み込みます。
システムプログラムをROMに持っていないため、起動には読み込み分の時間が掛かりましたが、このクリーン設計がX1シリーズに柔軟性と拡張性を持たせることになりました。
当時の8ビットパソコンの基本ソフトであるBASICのバージョンアップなんかも簡単にできたわけです。
初代X1はオプションのGRAMを増設すれば640×200ドットで8色表示が可能に。
標準で8オクターブ三重和音のサウンド出力が可能で、ゲームをプレイするのに最適なパソコンだった。
やはりこの頃のパソコンはゲーム性能がいかに高いかで売れ行きが変わったようだ。
内蔵のデータレコーダは2700ボーと高速で、プログラム制御で頭出しなどもできたこともあり、テープ版のゲームが多くリリースされた。
当時にしては珍しくボディカラーを選択することができ、ローズレッド・メタリックシルバー・スノーホワイトの3色が用意された。
PC-9801
機種名:PC-9801
メーカー:NEC
発売日:1982年10月
価格:298,000円
CPU:μPD8086(i8086コンパチ)(動作周波数:5MHz)
※NEC「PC-9801」カタログより
「PC-9801」シリーズはNECが発売した16ビットパーソナルコンピュータ。
1982年の登場から2004年3月の出荷終了までにシリーズ全体で1830万台も出荷したという人気シリーズである。
当時のホビー向けパーソナルコンピュータが8ビットCPUで低コスト化していたのに対し、「PC-9801」は高性能化に向かった。
高速な日本語表のためテキストVRAMを搭載、グラフィック画面の解像度は640×400ドット。
テキスト画面もグラフィック画面も、ハードウェアによる1ライン単位の縦スクロールが可能。
横スクロールは16ドット単位で可能で、この表示性能は当時主流だった8ビット機とは一線を画していた。
また、外部バス幅は16ビットとなっており、バスクロックは10MHz、最大転送速度は1MByte/secで高速な転送能力を備えていた。
このため、「PC-9801」シリーズはビジネスシーンでも大活躍し、オフィスでの事務処理だけでなく、製造現場での制御パソコンとしても重宝した。
FP-1000/1100
機種名:FP-1000/1100
メーカー:カシオ計算機
発売日:1982年
価格:FP-1000/98,000円、FP-1100/128,000円
CPU:メインZ80互換(動作周波数:4MHz)、サブ uPD7801G(動作周波数:2MHz)
※カシオ「FP-1000」カタログより
カシオ計算機が8ビットパーソナルコンピュータ市場に参入した製品。
「今買うな、カシオがきっと、なにかやる」
と詠まれたように、トレンド商品をアレンジして商品化するのが得意だったカシオ。
8ビットのCPUをメイン(Z80互換、クロック4MHz)とサブ(uPD7801G、クロック2MHz)のふたつ搭載し、ハイエンドに迫るスペックながら10万を切る定価で発売してきた。
SMC-70
機種名:SMC-70
メーカー:ソニー
発売日:1982年12月1日
価格:228,000円
CPU:Z80A(動作周波数:4.028MHz)
※ソニー「SMC-70」カタログより
パソコンでは後発組となったソニーから発売された「SMC-70」。
正式名称は「SONY MICRO COMPUTER SMC-70」。
広告のキャッチコピーは「ついにソニー。なるほどソニー。」満を持した感がある。
記憶デバイスとして3.5インチFDDをオプションで搭載可能。
16色表示できるグラフィック機能など、ハイエンドな機能を搭載した「SMC-70」。
ホビーからオフィスまで様々なシーンで使われることを想定して登場。
640×200ドットで4色表示、320×200ドットで16表示が可能なマシン。
業務用途では後々まで活躍した。
m5
機種名:m5(エムファイブ)
メーカー:ソード/タカラ
発売日:1982年11月
価格:49,800円
CPU:Z80(動作周波数:3.58MHz)
※ソード「m5」カタログより
「m5(エムファイブ)」はソードが発売した家庭用8ビットパーソナルコンピュータ。
ソードはビジネス市場で「M200Markシリーズ」などで存在感を示していた。
そのソードから低価格な普及機として1982年に発売されたゲーム向けのマイコン。
同時期にOEM供給していたタカラからゲームパッドが付いた「ゲームパソコンM5」が39,800円で発売された。
ROMカートリッジでゲームソフトが販売され、他社の高機能パソコンとは別路線でゲーム機のカラーが強かった。
ゲームROMとしては「ディグダグ」や「ボスコニア」、「マッピー」などの人気タイトルが発売された。
ナムコの人気タイトルがプレイできることで人気を博し、累計10万台以上を売り上げている。
ちなみに人気ゲーム機「ファミコン」が発売されたのはこの翌年の事である。
ぴゅう太
機種名:ぴゅう太(型番:TP1000)
メーカー:トミー
発売日:1982年8月20日
価格:59,800円
CPU:TMS9995(動作周波数:10.738MHz)
※トミー「ぴゅう太」カタログより
ホビーメーカーの「トミー」から発売された16ビットゲームパソコンの「ぴゅう太」。
日本語記述ができるプログラミング言語「G-BASIC」を搭載し、ユーザーが気軽にゲームを作ることができる低価格パソコンとして売り出されました。
当時まだなかった16ビット機ながら、低性能で低価格、基本的にはゲーム機だがキーボード付きでパソコンとしても使用できるという変わり者。
ゲーム機として販売されていたため大型スーパーの玩具売り場などでも購入できた。
コントローラはジョイコントローラと呼ばれる方向操作部が円形で平らなディスクパッドになっていたため操作性は評判が悪かった。
ソフトはROMカートリッジで26本、カセットテープで5本発売され、「フロッガー」「スクランブル」など、コナミの人気タイトルも移植販売された。
JR-200
機種名:JR-200
メーカー:ナショナル
発売日:1982年
価格:79,800円
CPU:TMN1800A(6802相当)
※ナショナル「JR-200」カタログより
1981年にホビーパソコンとして発売された「JR-100」の後継機として発売されたナショナルの「JR-200」
「JR-100」の後継機で上位機種となるが互換性はない。
HC-20
機種名:HC-20
メーカー:エプソン
発売日:1982年7月
価格:136,800円
CPU:日立630(6800相当)(動作周波数:614kHz)
※エプソン「HC-20」カタログより
エプソンのパソコン市場参入機で日本初のハンドヘルドコンピュータ。
モニター付きで単独使用できる低速のハンドヘルドながら25万台を売り上げるヒット商品となった。
当時のパソコンとしては軽量級だが重量は約1.6kgもあった。
日本初のハンドヘルドコンピュータで、A4サイズのコンパクトボディにパソコンに要求される機能を凝縮した。
しかもニッカド電池のバッテリーも内蔵し、コードレスでの運用も可能にしていた。
バッテリーでの駆動時間は約50時間だったという。
本体左上にプリンタ、右上にはマイクロカセットレコーダを内蔵し、どんな場面でもフル機能で使えるパソコン。
上部中央のモノクロ液晶画面には20文字×4行の表示が可能。
ビジネスシーンで活躍したがゲームソフトもリリースされたり、専門雑誌にゲームプログラムも投稿されていた。
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